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設置妥当の答申が実に十年振りに原子力安全委員によって出されたのは、東北電力が青森県の下北半島の太平洋側に計両している東通原子力発電所で、新規立地は八八年の北陸電力・志賀原子力発電以来のことである。
新規原子力立地は不可能という悲観論さえあったなかで、これも変化の兆しのひとつだろう。
さらに変化・進展という観点から大きな関心を集めたのは、問題が切迫していた使用済み核燃料を巡つての動きが挙げられる。
MOXはむろんウラン燃料製造も海外依存、そして使用済み燃料の再処理も海外依存という状態から脱却するため、青森県六ケ所村に再処理工場があるが、そこへ国内原子力発電所から使用消み燃料の搬入ができないでいた。
青森県が、プルサーマルが動かなければ使用済み燃料が施設に溜ってしまうことを懸念、搬入を認めなかったためだが、棚上げになっていた安全協定が締結されることになって一応、見通しがついた。
あくまで試験搬入という変則的な形でのスタートだが、大きな事態好転といっていいだろう。
この変化は何を意味するのか。
関係者からも明維な理由は見えてこない。
月並みだが機が熟したということなのだろう。
山動燃の「もんじゅ事故」、さらには同東海~事業所再処叫工場の燦発事故などで、原子力情勢は氷結したかのようにさえ見えたが、一方でこれを機会に、通産省、科学技術庁などの政府、電力会社、そして最も主裂な存在である地元住民の間で、反対・賛成をはさんでの否応のない交流が生まれてきたことも事実だ。
相手を遠くに見ながらの対立が、これらの事故を機会に直接的に向き合うことになった。
相手が見えてきたということから、信頼醸成が進んだという面もあるとされる。
ウラン資源も有限スウェーデンから九八年末、興味深いニュースが伝わってきた。
この情報は「ワールド・ニュークリア・ニュース・エイジエンシィー」が伝えたもので、内容はスウェーデンのオスカーシャム原子力発電所を所有する電力会社が政府に対し、MOX燃料の使用認可を申請したというものだった。
このニュースは関係者にはちょっとした衝撃だった。
というのも、スウェーデンは原子力閉鎖を決定している国であり、その国でMOX燃料を使うこと、つまりプルサーマルを実施することは、同国が目指す脱原子力政策の現実的な変化を意味するからである。
このオスカーシャム原子力発電所の一号機では、石油危機直後の七四年にすでにプルサーマルを何回か実施済みだった。
その一つの理由がプルサーマルがエネルギーの再利用という資源の有効利用に直接つながっていることにあるためだろう。
いったい具体的に原子燃料は最初の段階と最後の使用済燃料の段階ではどうなっているのだろうか。
再確認しておくと、発電前の原子燃料は燃えやすいウラン235が三から四%。
MOX燃料はこの使用済燃料からプルトニウムを取り出してウランと混ぜ四%から九%程度の濃度にしたものだ。
プルサーマルによって節約されるウランは約二割程度となる。
将来、燃え残りのウランも再使用されれば節約は四割までに向上する。
確かに再生可能エネルギーとしてはこの原子燃料以外にもある。
太陽光発電、あるいは風力、波力発電などの研究が進み、一部が実戦力になってきている。
水力も再生可能といえるだろう。
しかし、これらのエネルギーは当面、基幹のエネルギーの役割は果たせない。
この点からも無資源国・日本にとってプルサーマルは資源の有効利用という目的にうまくかなっているといえる。
それに最近、あまり議論されなくなっている資源の有限性という問題も考えておく必要がある。
それは原子燃料の恭本になるウランも決して無限ということではないということだ。
原子力発電は燃料を一度入れてしまうと一年以上は持つために、緊急時への対応能力が、ほかの化石燃料に比べて高く、この結果、準国産エネルギーとして評価されてきている。
それでも、そのウランはほぼ全量が輸入であり、相手国がオーストラリアやカナダなどの先進悶で供給が安定していることは事実だが、万能のエネルギー源ではない。
ウランそのものも有限だからである。
九九年末、世界では凹百三十三基の原子力発電が動いている。
このうち、日本には世界最大の柏崎刈羽原子力発電所の七悲など五十一基がある。
ウラン燃料も有限である以上、その使用も勝手次第ということにはならない。
価格の変動などで正雄な数字で示すのは難しいが、ウランが採れる可能年数は、資源エネルギー庁などの見通しでは九七年ベースで、ざっと五十二年とされている。
価格のほか開発技術の発達など不確定要因があり、実際にウランが約五十年でなくなるとするのは早計なのだが、目下の状況としては、そうなる恐れがあると惣定しておいて対策を講じておく必要があるすでに現実の問題として、ウランは生産が消費を下回っているのだ。
これは八四年ごろからの現象で、この年、ウラン協会によれば不足生産量、必要量から生産量を引いた量は約三万トンに達してしまった。
この不足分はこれまでの在庫取り崩し、さらには旧ソ連などからの輸入で賄っているのが現状となっている。
それでもウラン価格は長期契約によることや、原子力発電が世界的には石油危機後に予想されたほど急激には増加しなかったことなどから、比較的低水準で推移している。
とはいえ今後、アジアで原子力開発が進むことなどを視野に入れると、不安定要因がないわけではない。
このため、総発電の約三割を原子力に依存するわが国がウラン資源の有効利用を進めることは国際的にも重要な責務でもあるとされ、プルサーマルがそのひとつの手段であることはまちがいない。
それは、またこうしたウランの有効利用、リサイクルが地球温暖化防止にも大きな貢献するからでもある。
日本が九七年度に輸入した石油は約二億七千万キロリットル。
また、この年度に原子力発電が発電した電気は三千二百億キロワット時。
これを稼働率などを考臆して石油火力で発電したものとして試算すると、ざっと東京ドーム六十杯分の石油が必要となる。
そうなれば輸入量は約二七%増加、炭酸ガスは六千六百万トン余分に排出されることになってしまう。
地球温暖化防止・京都会議の合意を達成するために、原子力二十基の新設が二〇一〇年までの条件とされる背景にはこうした原子力の非温暖化エネルギーという特色があるからなのだ。
このためには当然、燃料となるウランも最大限有効に活用していくことが重要だろう。
脱原子力を国民投票で決め、さらに国会決議までしたスウェーデンで実際には原子力廃止問題が膝着状態となり、今、新たにプルサーマルが動き出そうとしている現実を視野に入れた時、日下、実施直前にあるわが国のプルサーマルは当然の帰結だといっても過言ではないのではないか。
総理府が九九年八月二十一日に発表した「エネルギーに関する世論調査」の結果を受けての電力業界首脳の声だ。
目下の原子力問題が置かれた状況の複雑さがにじみでている。
調査の結果は原子力開発の進め方については、推進は「積極的に」と「慎重に」を合わせて約四三%。
これに対して反対は「早急廃止」に「将来廃止」を合わせ二二%。
スタンスに温度差はあるが推進が廃止を大きく上回っている。
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